エホバの証人をやっていると、人によって待遇が違うと感じることが多々あった。
でも現役のころは素直だったので、「その人その人で異なる状況があって、配慮とか情状酌量とかあるんだろう」と思っていた。
でもそんなことはなかった、ただ騙され、いいようにつかわれていただけなのだと脱退後に気づいた。
一番不愉快な思い出をここに残す。
エホバの証人では未信者と結婚してはならない、付き合うこともだめ、という鉄のおきてがある。
そんなことが発覚しようものなら助言、特権剥奪、排斥というような処分が即刻下される。
・・・はずなのだが、適用されない奴らがいるのだ。
それは私の表現で言うとエホ証の中で「身分の高い」人らである。
ある年の「記念式」の日だった。(記念式とは主イエスキリストが人類のあがないとなり、処刑された日を記念する非常に厳粛な雰囲気で催される式典である)
集会に久しく顔を出していなかったA姉妹の娘が、母親と一緒に出席したのだ。
その腕には生まれたばかりの乳児が抱かれていた。
未信者と恋愛関係に落ち、結婚し、出産した子供である。
娘もA姉妹もこれ以上ないくらい喜びにあふれた笑顔であちこちに愛想振りまき、赤ん坊をみせびらかしている。
周りの信者たちは
「よくいらっしゃいました。赤ちゃん生まれたんですか、おめでとうございます!」
「○○姉妹(娘の名前)、ひさしぶり~!赤ちゃんかわいいー!!」
「このあたりは席の出入りがラクでしょう。ここにどうぞ」
ともてなし放題である。
なにこれ。
ほんま、真面目にすべての欲望をなげうってコツコツと、貧乏生活にも不満のひとつももらさず頑張っている私らに、何がいいたいのん、貴様ら親子は?
主の記念式に出席しにきたあ?
ちげえだろう、赤ん坊を自慢しにきただけだろうが。
下々の私たちは、禁止とされているオイシイことをぬけぬけとしてのける貴様らを、指をくわえて眺めてろってか。
ただでさえ色々な恥、家族から阻害される恐怖、学校の人間関係から阻害される恐怖、そして人生で誰もが味わうはずの特権をとりあげられ、想像を絶する辛抱をしている、年頃の多感な若者たちの前で、貴様ら「開拓者様」は何をやっとんのか。
このような例を筆頭に、エホ証の中にもいやらしいヒエラルキーが根を張っていて、あの閉ざされたコミュニティのなかで一層の人間関係のストレスを生じさせていた。
どんな人が見えない権力を得てふんぞりかえっているのか。
さきほどの親子の例だと、母親は会衆内でも古い開拓者で、女性の中では幅をきかせ、3人の指に入るくらいの強さを誇っていた人だ。
口が達者で、エホ証内のスキャンダルは絶対に見逃さない人である。
バプテスマを受けた若い子について、「あの子ははじめの数回、水に浸かりきらなかったらしい」などという、非常にデリケートなうわさをどんどん広める下品なオバサンだ。
��バプテスマとは、キリスト教徒が”神にこの身をささげます”つまり生涯を神のためにささげますということをあらわすための儀式で、厳格な審査(おそらく身辺調査含む)や教育を経て受けられる一生ものの行為)
家は地元でも古くからの家柄らしく、大きく裕福な家で何不自由なく暮らしている一家である。
娘は「開拓者になるため」に短大で専門分野を学んで卒業したが、在学中に得た自由と、なに不自由なく手に入るお小遣いででチャラチャラと着飾っていた。
女どもは働かなくても車を一人一台所有し、開拓奉仕し放題な家である。
エホ証というコミュニティは、精神面で弱さを抱えた人や、経済的社会的にめぐまれないような人が集まっている集団だから、口がうまくてうわさを撒き散らし、口だけで人々の流れを変えるような人がとにかく強くて様々な場面で勝利(のつもり)していたような気がする。
そしてもうひとつは間違いなく、お金持ち。金を持っている人には皆へりくだっていた気がするな。
しょぼい身の上抱えた人たちだから、ぱっと華やかに見える人のまわりにはチヤホヤな空気がいつも流れていた。
幼い私はいつも「私らはこの華やかな人たちが華やかでいられるようにするための、比較対象のための雑魚」みたいなことを考えていた。
金を持っていたエホ証はなんであんなに持ち上げられていたのだろう。
集会場が老朽化したから改修します、なんてときに匿名でウン十万円もポンと寄付するからか。
なんなのだろう。
まあそれは、一般の人間社会でも同じか。
つまりは、エホ証もただの卑しい”この世の”人たちじゃあないですか。
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